フィッシャーマンのためのフィッシングカフェ


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カズさんからの手紙 44 ワカサギの穴釣り

カズさんからの手紙 44
(この物語はフィクションです。)

ワカサギの穴釣り

というわけで、私は今、黒駒湖の上にいます。
禁断症状もピークに達した某日、黒駒湖管理人アシスタントというとてもうらやましい仕事についた旧友の佐藤さんから電話があり、ワカサギの穴釣りをやるから来いとのこと。
もう僕は喜びいさんで愛車の旧型パジェロを駆って雪深い黒駒湖に向かったことは言うまでもなかった。
黒駒湖はかなりの部分が白い水で覆われていた。
以前は必ず全面氷結したというが、近頃ここ数年の暖冬で部分氷結にとどまっているという。
しかし、先日のドカ雪で白一色に染まった黒駒湖は圧倒的に〝冬〟であった。
「きたっ!」またカズさんの声だ。
最初は久しぶりで嬉しかったけどこう度々大声で叫ばれると嫌になってくるな。
しかもたかがワカサギ釣りなのに。
僕の竿にはあたりもこない。
たよりの古葉さんはさっきから飲んでばかりですっかり出来上がっているし。
そうなのだ。
今回のワカサギ釣りのメンバーは古葉さん、カズさん、友人の佐藤そして僕の4人だった。
そしてせっかくだから2組で競争して負けた方が今夜の夕食担当ということになった。
そして組んだペアがカズさんと佐藤の管理人ペアと古葉さんと僕のペア。謀られたよな。
考えてみればかなうわけないもの現地人には。
波瀬さんって、ああみえて結構策略家だしな
そんな愚痴めいたことをブツブツつぶやきながら竿を上下に動かしていいあたりがあった。
クーンク-ンと手ごたえがある。
よーし、久しぶりの一匹だと思いつつ上げようとすると急に激しいあたりがそれに続いた。
竿が一気にのされると、抵抗する間もなくロッドがパッキンと折れ、ついでにラインも切られて氷の隙間の水面へと没していった。
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by kftkubo | 2014-01-19 19:23 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 43   

カズさんからの手紙 43 
(この物語はフィクションです。)

シーズンオフの釣り師

シーズンオフの釣り師ほど役に立たないものはない。
それでも禁漁になったその年内は数々の苦い思い出、辛い記憶も新しくどちらかというとある種の解放感があることも確かである。
魚にとってはもちろん人間にとっても心休まる時期なのだ、なんて思ったりもする。
しかし、年が明け初詣でに行き「今年こそ大物が釣れますように。」なんて事を願い出す頃はもうそろそろ禁断症状の始まりである。
あの辛い日々も時の流れとともに美化されて行き、「あの時は釣れなかったけど一人川のせせらぎを聞きながら大岩の上で食ったニギリメシはうまかったな。」とか、「あの時もう50cm右に俺のフライが着水していたら確かに40cmオーバーの岩魚は俺の手の中にあったのに。」
なんてことが次々とうかんでくる。
それでもしばらくは管理釣り場などで時をうっちゃるのだが、夕暮れ時にフッと頬を撫でる風が妙になまめかしくなってくるともう駄目だ。
「行きたい!さわりたい!」水の音、風の音、ライズの音。
ラインから電流のように伝わる鱒達の躍動。
釣り上げた鱒の冷たいけど何故かぬくもりのあるあの感触。
時折ボンヤリと遠くを見ているような人がいたらそれは間違いなくシーズンオフの釣り師か、ちょっと危ない人である。
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by kftkubo | 2014-01-12 16:23 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 42

カズさんからの手紙 42
(この物語はフィクションです。)

息子の話

全員がすっかり満腹し、酔いも少々まわってきた頃、古葉さんがいつもよりちょっと低い声で話し出した。
「今日はみなさん、解禁おめでとう。
ついでにウチのヤツの誕生祝いまでしてもらって本当にありがとうございました。
さて、ちょっとここで堅い話をさせてください。
私には今、みなさんご存じのように7歳と3歳の息子がいます。
上の子はやはりご存じのように現在ルアー釣りに夢中になっています。
その子が友人たちと釣りに行って、まあなかなかのサイズのヤマメやらニジマスやら釣ってくるのです。
そこで私が助平心をだして訊くわけですよ、
「ポイントを教えろ。」って。
最初は友達との秘密のポイントだから嫌だ、なんて言っていますけどね、私のアワビのルアーを2~3回ちらつかせると、すぐに食いついてくるのですね、これが。
まあそんなわけで行くのですよ、そのマル秘ポイントヘ。
確かによく釣れるのですよ。
7歳の子供が釣れるのだから当たり前と言えば当たり前なのですが。
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by kftkubo | 2013-12-31 22:35 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 41

カズさんからの手紙 41
(この物語はフィクションです。)

誕生パーティー

そこへ上機嫌の古葉さんが帰ってきた。
狼犬ガイアが迎えに出た。
大型クーラーの中のビールを一本取るとそれをうまそうに飲みつつ話しだした。
「いやあ、やっとさっき50㎝ほどのサクラマスをかけましたよ。
全員が揃っているところをみると、どうやらみんな型を見られたようですね。
ところで今日の大物賞は誰だったのかな?……。
窪田さんの65cmのブラウン?それは年間でもベストテンに入りそうですね。
えっ、リリースしちゃったって‥記念に剥製にしてあげられたのになあ。もう釣れないよ、きっと。」
自分でも残念に思う気持ちもホンの少しだけあった。
でもいいのだ。またあいつに今えるに決まっている。さらに大きくなっているぞ。

「古葉さん、今日は奥さんの誕生日でしょう、殺生は行けませんよ、殺生は。なんてね。」
そんな軽口で自然にパーティーが始まった。
誕生日だって言うのに休む間も無く働いていた古葉夫人も、やっと準備がひと段落してパーティーの輪に加わった。
カズさんが今日のメインディッシュである黒駒湖・鱒料理三品、つまりサクラマスの冷燥、ブラウントラウトの照焼風ステーキ、レインボートラウトの酢豚風五目あんかけを次から次に持ってきた。
本当にうまいものを食べたら、「うまい!」としか言いようはないのだ、と実感した。
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by kftkubo | 2013-10-28 07:48 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 40

カズさんからの手紙 40
(この物語はフィクションです。)

今日は古葉夫人の誕生日

 実は今日は古葉夫人の誕生日なのである。
古葉さんの優しさというか、酒落心というか、4月2日、黒駒湖の解禁日が彼女の誕生日にあたる。
大切な奥さんの誕生日を、一番大切な湖の解禁日にしたというわけだ。
古葉さんは恥ずかしがって言わないが、そうなのだ。
カズさんにそっと教えてもらったのだ。
古葉さんのその純粋さに感動してしまった。
そしてまた、この倶楽部のために自分の土地を担保にして億近い借金をした、純粋でとんでもない人の奥さんの、そのとんでもない人を見つめる目の優しさに感動してしまう。
それにしても、この湖に来るようになってやたらと感動しやすい人になってしまった。
 「じゃ、私はパーティーの準備がありますので先に上がりますね。」
そう言ってカズさんも、狼犬に守られた美人のいるほうへ向かっていこうとするので、あわてて「僕も手伝います!」と声をかけながら湖を後にした。
 AM10:30 朝食を兼ねた古葉夫人の誕生パーティー(古葉さん以外のメンバーで勝手に決めた)&解禁パーティーは12時からだというのに古葉さんを除いた全員がすでに会場であるログハウス前広場に集まり、カズさんの手伝いをしたり、ときどきこっそりビールやらワインやらを飲っていたりしている。
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by kftkubo | 2013-10-08 18:51 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 39

カズさんからの手紙 39
(この物語はフィクションです。)

狼犬と美しい女性

 コーヒータイムも終ろうとしていた頃、狼犬と美しい女性がこちらにやって来た。
狼犬は今やすっかり仲良くなったハスキー犬のガイアである。
もっとも誰も呼びづらいので「ガイ!」と呼んでいるし、本人もそのつもりでいる。
ちなみにガイアとはギリシャ語で大地という意味だそうである。
 そして赤と黒のバッファロープレイドのマッキーノクルーザーにヘリンボーンパンツ、ガムシューズを履いた、どうしても僕より年下にしか見えない美人は古葉さんの奥さんなのである。
以前何度かお目にかかってその度に、僕よりひとつ年上だという彼女に「絶対嘘だ!」と言い続けていた僕は、すっかり気に入ってもらえたらしく、時々家族の方にと、お土産をもらったり、逆にあげたりして、僕を介して妻ともけっこう仲がいい。
それにしてもすてきな人にはすてきな奥さんがいるのだな、なんて思いつつ、同級生だった自分の妻の顔を思い浮べている僕だったりして。
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by kftkubo | 2013-09-11 12:42 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 38

カズさんからの手紙 38
(この物語はフィクションです。)

素晴らしき構想

 「それにその利益は私たちのものではありません。
魚たちを育て、私たちに感動を与えてくれる自然をもっと増やすのです。
きっといろいろな動物たちも集まってくるでしょう。
リゾート開発とやらで、この辺も安住の地ではなくなっていますからね。
ここはいわば動物の掛け込み寺でもあるわけなのです。
早くたくさんの自然を取り込まないとすぐにゴルフ場にされちゃうのです。
ですからここでの費用なんてゴルフに較べれば安いものなのです。」
 「気の早い話ですけど、最初の利益でどこを買うのですか。」
「それはもうだいぶ以前から古葉と決めていました。
黒駒湖川下流の権利すべてとその河壕全域です。」
「そうだと思いました。
去年あの辺まで釣り下って感じました。
私たちの幸川から一歩下流に下るとすっかり渓相が変わってしまっているのですものね。ゴミもやたら多いですしね。
せめてS川との合流地点までは私たちで管理したいと思いました。」
「乱暴な手段もしれませんが、今やこれくらいやらないとだめなところまできているのです。」
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by kftkubo | 2013-09-01 16:37 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 37

カズさんからの手紙 37
(この物語はフィクションです。)

来年の4月2日

パーコレーターでカズさんがいれてくれた熱いコーヒーを飲みながら、僕はずっと疑問に思っていたことを聞いてみた。
「来年の4月2日には、お客さんは来るのですかね。」
「はい。既に100件近く予約が入っています。目標としてはのべ200人まではもっていきたいですね。つまり窪田さんたちが26日間来られて、一人ずつ担当してくださって260名です。まあ余裕をもって考えれば200名が限度というところですね。」
「料金はいくらくらいするのですか。」
「1日1万円と考えています。入漁料、ガイド料で各5千円といったところですね。」
「それは少々高くないですか。宿泊費とか会費は別でしょう。」
「そうですね、たぶん2泊3日で1人5万円くらいかかると思います。それでも一度来られた方はきっともう一度来て下さいます。その感じ、分かりますよね、窪田さん。」
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by kftkubo | 2013-08-22 21:10 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 36

カズさんからの手紙 36
(この物語はフィクションです。)

スタッフミーティング

 あれから約7ヶ月。月に2~3度は必ず全員がきちんと集まりミーティングを行ない、禁漁期間以外は釣りをし、様々な自然に接するための講習を受けた。
 講師は主にカズさんが務めたが、スタッフの中にもそれぞれ一芸に秀でた人がいて、植物に強かったり、昆虫、動物に詳しかったりして、その都度講師になってもらったりもした。
何よりも驚いたことにカズさんはレスキューの経験もあることである。
応急処置などを教えてもらい、自分でも日に日にレインジャーらしくなっていくようでとてもうれしかった。

 そして今日、例年よりも少ないという雪の季節が終り、黒駒湖に春が訪れ、解禁日を迎えたというわけである。昨夜は久し振りに全員が揃い、前夜祭ということで少々飲みすぎてしまったことでもあり、朝の釣行が各自満足のいく結果を得て、カズさんが 「お茶にしましょう。」と、みんなを誘った。その声でふと時計を見ると、9時30分。日もかなり高くなってダウンジャケットが少し暑いくらいになってきていた。
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by kftkubo | 2013-08-06 11:39 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 35

カズさんからの手紙 35
(この物語はフィクションです。)

3つの質問

 僕はカズさんに3つの質問をした。
① フライフィッシングのテクニックもほとんどないし、自然に対する様々な知識もない自分に果たして出来るのか。
② 26日間のいわゆる義務日数以外に、楽しみとして来てもいいのか。
③ 自分以外に何名くらいのボランティアスタッフがいるのか。
 答えは簡単だった。レインジャーは釣りに関してはあくまでもポイントと鱒の扱い方、フライの選択くらいにしか口は出さない。
何よりも大切なことは、釣り人から黒駒湖の動植物を守ることであり、それが主目的である。
いかにローインパクトに自然の中で遊ぶか、を教えるのだという。
それらのことは2年後の正式な解禁までにしっかりと覚えてもらう、とのこと。
 そしてもちろん、いつでも黒駒湖には来てもらって結構、ただし食事は自分で用意し、準備すること。
 ボランティアスタッフは現在、古葉さんとカズさんを除く10名。
その中には僕の友人の佐藤さんも入っている。
 僕はすぐにぜひやらせて下さい、と返事をしたことは言うまでもない。

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by kftkubo | 2013-07-24 18:30 | カズさんからの手紙 | Comments(0)