フィッシャーマンのためのフィッシングカフェ


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カズさんからの手紙 19

カズさんからの手紙 19
(この物語はフィクションです。)

素晴しき一日の終わり

秋の陽はすでに暮れかかってきていた。
何度も言うようだけどここの景色は最高に美しい。
特に陽が沈みかかったこの瞬間は凄みさえ感じる美しさだ。
紅葉と夕陽で真紅に染った山並と、それを写して深く紅い黒駒湖。
カズさんが〝里の秋〟をへたくそな口笛で吹きつつタックルを片づけている。
その背中が何故か変に懐かしくてならなかった。
そうまるで少年時代の友人の様に。
薄暗くなった帰り道。
僕は手にさっきの鱒をぶらさげてとても満ちたりていた。
何だかずっと昔の子供の頃にもこんないい気持ちの帰り道があったような気がする。
汚れたズボンのポケットにはジャラジャラと小銭が入っていて、片手にはその日の獲物のクワガタやらセミやらがしっかりと握られていた。
カズさんとの尽きない釣りの話。
今夜は本当に泊めもらおう。
もっともっとここにいたい。
そしてもっとこの人達と話をしてみたい。
ログハウスでは暖かい部屋の中で古葉さんとあの狼犬が待っているのだろうな。
湖で大きなライズの音が聞えたのは気のせいだったろうか。
黒駒湖の素晴しき一日は終わろうとしていた。

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by kftkubo | 2013-03-27 08:10 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 18

カズさんからの手紙 18
(この物語はフィクションです。)

見果てぬ夢

かなりの時間がたった様な気がした。
カズさんのヒンヤリした手が僕の手を握っている。
「おめでとうございます。」
僕は放心状態で足元に横たわる、55㎝紫色の帯が輝くスーパーレインボウを見た。
「ちょっと遊ばせ過ぎでしたね。
こいつは全力を出し切ってしまったから、もう放しても無理でしょうね。
窪田さん責任とってやって下さいね。」
僕がまだ放心状態が続いていて、言っている意味がわからずポカッとした顔をしていると、
「今夜は泊っていって下さいよ。
こいつがメインディッシュになりますから。
うまいですよ。」
といいつつ僕の生れてはじめての50㎝オーバーのネイティブ トラウトは、早くもしめられ、お腹をさかれてしまっていた。
悲しそうな僕の表情を誤解したのかカズさんが言った。
「このサイズの鱒になるとほとんど敵はいないのです。
だからこうして時々私達の食卓にのる事も必要なのです。
つまり間引きとでも言うのかな。」

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by kftkubo | 2013-03-23 07:33 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 17

カズさんからの手紙 17
(この物語はフィクションです。)

ネイティブ レインボウ50㎝オーバー

「そらキターッ!」
反射的に大あわせをしたと思う。
そう確かに大あわせだったはずだ。
なのに、ロッドが立たない
それどころか手元にあまっていたラインがスルスルと手の中をすり抜け、リールのドラックがはげしく鳴って更にラインがもっていかれた。
「ロッドを左手に持ち替えて、右手でリールにドラックをかけて下さい。」
カズさんの声がとんだ。
これか。
よく海外の釣り雑誌で見るシーンだ。
それを今、僕がやっているのだ。
うれしくて頭の芯が痩れてきた。
紅葉の山並をバックにそいつがジャンプした。
「50㎝オーバー!レインボーですよ。窪田さん。」
ヒェー、僕にとっては未体験ゾーン。
手のヒラが熱い。
ロッドを持つ手が痩れてきた。
ライン、ロッド、リールと伝わったそいつのパワーが僕の体全体に強い生命力をぶつけてくるようだ。
再びジャンプ、そして流れを登って行く。
その度に僕は「うわっ、とっと。」なんておかしな声を発しつつ、へっぴり腰で防戦一方だった。
それでも疾走は止った。
僕は釣ってしまうのだろうか。
見果てぬ夢、ネイティブ レインボウ50㎝オーバー。

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by kftkubo | 2013-03-17 17:29 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 16

カズさんからの手紙 16
(この物語はフィクションです。)

「フィッシュ オン」

「ちょっと早いのですネ。
極端な話向うあわせでいいのですよ。」
気をとり直してもう一度キャストする。
そしてうまくメンディングもこなしたぞ。
流れにゆられてモジモジと流されて行くカメ虫をうまく演出出来ていると自負。
ほうらとってもおいしそうなカメ虫だよ。
それ出ろ、ガポッと行け、どうした。
そんな思いを声にならない一人言でつぶやきつつじっと水面を見つめる。
秋の午後の日射しはギラギラと目にまぶしい。
ちょっと視線をはずし紅葉の山並を眺めつつ数度まばたきをした。
そして軽く深呼吸。
っと、その時ガポッというライズ音と鋭いカズさんの声がとんだ。

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by kftkubo | 2013-03-12 07:43 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 15

カズさんからの手紙 15

ナチュラルドリフト

ライズがちょっぴり離れてしまった様だ。
カズさんの指示するポイントにフライを流そうとしているのだけれど、流れ込みの水量は結構多い様ですぐに僕の緑のタワシにドラッグがかかってしまうのだ。
さっきはもっと流れの手前でライズしていたのに、今の騒ぎで流れの向う側ばかりライズしている。
「窪田さん、メンディング、メンディング。」
カズさんがあたり前の様に言う。
それは分っているけど………。
所詮はインドアフライフィッシャーマン。
小技がきかない。
きちんと練習しときゃよかったな。
それでも数回のキャストのうち何度かはメンディングもうまくいき、ナチュラルドリフトでおいしそうに流れていってくれた。
そして数度のアタリ。
しかし、のらない。
本当に大きな音をたててアタックしてくるのだけれどのらない。

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by kftkubo | 2013-03-07 07:59 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 14

カズさんからの手紙 14
(この物語はフィクションです。)

ネイティブ ブラウン 44㎝

余裕あるなあ。
僕だったら40㎝オーバーのブラウンなんてかけたら目はチカチカ、息はゼェゼェだろうに。
そして数分後、彼の足元に横たわったのは44㎝。
目を見張るほど美しいブラウントラウトだった。
「こいつは完全にこの湖生まれの鱒ですね。
ほら見て下さい。
ネイティブのブラウンだからこのヒレが異様に大きいでしょう。」
そう言ってカズさんは油ビレの反対に付いている付け根の尻ビレを軽く引っ張ってみせた。
鱒を大切に湖に返すと僕の方を振り返り、
「さあてと、すみませんでしたね。
どうも私はこの湖に向かうとまず勝負したくなってしまって。
一匹釣らないと余裕が出てこないのですよ。
その日の最初の一匹って大切ですからね。」

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by kftkubo | 2013-03-04 07:20 | カズさんからの手紙 | Comments(0)