フィッシャーマンのためのフィッシングカフェ


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カズさんからの手紙 29

カズさんからの手紙 29
(この物語はフィクションです。)

カーティス・クリーク

自分を含め、釣師は釣れたいい話ばかりよくしているので、あやうく釣りは大自然の懐に抱かれ都合生活のストレスを忘れさせてくれる、なんて下手なコピーみたいな気持ちになってしまうところである。
つまりなんのことはない、さらにストレスをためてしまっているのである。
だからこそ黒駒湖が必要なのだ。
そうだ、どうなるのだろう黒駒湖の話は。
「そこで黒駒湖アングリングクラブの件なのですけどね、」
カズさんが静かな口調で切り出した。
「会員制という話は中止となったことは先程お話しました。
あまりにも特権的であまりにも閉鎖的ですからね。
古葉も同じ考えなのですが、結局私たちは釣りが好きですし、釣りが好きな人たちが好きなのです。
誰もが釣りを楽しめて、誰もが満足して帰れる。
数多くの人たちのカーティス・クリークになる。
これが私たちの希望なのです。
そしてこれが一番肝心なことなのですが、ここで釣りをした人たちは必ず何かを学んでほしい。
本物のアングラーとなって帰ってほしい。
湖自体をひとつのスクールとしたいのです。」

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by kftkubo | 2013-05-28 14:18 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 28

カズさんからの手紙 28
(この物語はフィクションです。)

よみがえる辛い思い出

カズさんが続けて言った。
「だけど最近釣りが辛いなって思うことが時々あるのですよ。
それはつまりゴミや河川工事などによる環境問題のこととか。
釣れてくる魚に対しても。
いろいろなのですけどね。
とにかく釣れても釣れなくてもなにか空しさみたいなものが残るのです。」
「釣りに人生を捧げているから、彼は。
俺なんかほかが嫌になっちゃってここ以外では釣りをしなくなったよ。」
古葉さんが話題の割に陽気な声で言った。
僕は人生をまだ捧げていないけど、私的な時間のほとんどを捧げている。
「そうですね。
特に僕ら会社員は休みが土日に集中しているでしょう。
だからまず釣りに行くまでに交通渋滞という試練があって、そして次に釣り場に着いたらどんなポイントだろうと人のいないポイントに入るのがまたひと苦労ですね。
釣れそうだとかそんなこと関係ないのです。
とにかく混まないところに入るのです。
そしてたまに釣れる魚といえば、放流して間もない尻尾の丸いのばかり。
それと相変らずのゴミの山。
せめて自分が入ったポイントのまわりだけでも拾って行こうと思うのですけど、あまりの量にそんなことしても無駄なのだっていう無力感でいっぱいになってしまう。
結局ぐったりと疲れて帰ってくる。
そしてさらにズシッとくることが、渓流に行ってとってもいいポイントをみつけて大事に釣っていたところが、翌年には見る影もなく河川工事で変わっていたりすることなのです。
しかもそれが一度や二度じゃないのですからね。」
話しているうちにいろいろな辛い思い出がよみがえってくるようだ。

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by kftkubo | 2013-05-23 19:33 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 27

カズさんからの手紙 27
(この物語はフィクションです。)

釣りが辛いと感じたことはありませんか?

「ところで窪田さん、」
カズさんがトイレから転がるように飛び出してきて口を開いた。
「釣りが辛いと感じたことはありませんか?」
僕はちょっと返事に困ってしまった。
釣れないことがイコール辛いということになるのなら、僕の釣りはまさに苦行僧の荒行のようなものかもしれない。
釣れない日々の繰り返しなのだから。
しかし自分の釣りは結果がすべてではないのだ。
あくまでも釣りをするその過程を楽しむものなのだ、と思っている。
そんな僕の気持ちを見透かしたようにカズさんが言った。
「確かに釣りに行く前日ほど、釣りという行為の中で楽しい時間はありませんね。
とくに解禁日前夜のあの気分。
何度味わってもいいものです。
そして釣行後の仲間たちとの釣りの四方山話。
たとえ釣れなくても釣りの楽しさをしみじみ思うひとときですよね。」
「釣りに行ったときのすきっ腹にしみる酒の味。
ちょっとコゲのついた飯のうまいこと。
そして焚き火の火。
これらも、釣れない自分を大いに慰めてくれるねー。」
古葉さんがちょっと酔った声で口をはさんだ。

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by kftkubo | 2013-05-16 20:02 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 26

カズさんからの手紙 26
(この物語はフィクションです。)

その前にトイレに

「さて、先程古葉が言った私の立案なのですが、大勢の人間にこの湖を開放しつつ、しかも自然を今のままに保つ方法があったのです。
それはですね……すみません。
その前にトイレに。」
あわただしく席を立つカズさんを横目で見ながら古葉さんが一言ぽつりとつぶやいた。
「ああいう奴です。」
僕がプッと吹きだすと、古葉さんも笑いながら立ち上り窓際に行き、先程からビールからかえたストレートのバーボンウイスキーの入ったグラスで窓の外を指すと言った。
「素適な星空ですよ、窪田さん。」
確かに美しい星達だったけど、それより僕にはカズさんの素晴しいアイディアの続きが気にかかって仕方なかった。
どんな事なのだろう。
そしてこれから先も僕はこの黒駒湖に来られるのだろうか。
古葉さんが低い声で鼻唄を唄っている。
暖炉でバチッと木のはぜる音がしている。
柱時計は午後10時25分を指していた。

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by kftkubo | 2013-05-07 22:01 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 25

カズさんからの手紙 25
(この物語はフィクションです。)

カズさんの話

何だか話は僕の予期せぬ方向へと進んでしまっている。
暖炉の炎にすっかりあぶられビールの酔いがますますまわってきて、どんな話にも今なら納得できてしまいそうだった。
そんな僕にカズさんが冷たい水を渡してくれつつ、古葉さんのガンガン頭にひびく大河の流れの様な太い声とは逆に、小川のせせらぎの様な涼しい声で話しかけてくれた。
「私や古葉、それに数名の仲間達で、今までに何度か自分達の理想の釣場を作ろうと何ヶ所かの川や湖で放流や清浄作業など地道な行動をしてきました。
しかし、ことごとく失敗に終ってしまいました。
原因はいろいろありました。
たぶん窪田さんなら想像がつくと思います。
そんな時に私達に本当に守り育てるに値する湖が手に入ったのです。
何よりも私がうれしかったことは、水源地も古葉の土地になっていたということです。
それにこの黒駒湖にはたくさんの湧水もあるのです。
つまりどんな開発がまわりで行なわれようともこの蒼き黒駒湖は不滅なのです。
まあ古葉が欲に走らない限りですけどね。」
「うーん、つらいなあー。」
古葉さんがおどけた様に口をはさんだ。

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by kftkubo | 2013-05-02 06:45 | カズさんからの手紙 | Comments(0)