フィッシャーマンのためのフィッシングカフェ


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カズさんからの手紙 31

カズさんからの手紙 31
(この物語はフィクションです。)

2032年4月2日

 ビューン、ビューンとラインが風を切る音が聞こえてくる。
聞き慣れた音だ。
今まさにカズさんが僕の左十メートル程離れて8番のシンキングラインを遠投しようとしている。
2032年4月2日。
快晴、気温摂氏六度。
午前5時30分。
黒駒湖の鱒釣解禁の日である。
僕とカズさんのほかに10名の人間が、それぞれ各自のポイントでロッドを振っている。
そしてその中にはもちろん古葉さんと僕の友人佐藤さんもいる。
黒駒湖アングリング倶楽部の当初のメンバーが全員ここに揃って竿を出している。
 個人所有の湖なのだから特別禁漁期間を設ける必要もないのだけれど、将来だれもがネイティブな釣りが出来る湖として開放したいという古葉さんの希望で、まだほんの仲間内で勝手に釣りを楽しんでいた頃から禁漁期間を決めていたということである。
11月23日から4月1日までの約5ケ月間である。

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# by kftkubo | 2013-06-13 18:38 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 30

(この物語はフィクションです。)

黒駒湖 レインジャー

いよいよ話は核心へ近づいたようだ。
古葉さんが話を引き継いだ。
「まず私たちが考えたことは、黒駒湖をすべての人に解放するためにどうすればよいかということです。
そしてその答えがやっと出たのです。」
そこで古葉さんが言葉を切った。
ストレートのバーボンで口を湿らせた。
僕は酸素不足で倒れるかと思うほど息を詰めて次の言葉を待った。
 「それは〝ガイドシステム″なんです。
つまり誰もがここで釣りはできますが、その場合必ずひとりのアングラーに対してひとりのガイドを付けるのです。
しかも釣りのガイドだけではなく、湖とその周辺の自然に対するレインジャーでもあるのです。
いや、正しくはレインジャーが釣りのガイドも務める、と言ったほうがいいでしょう。
そして窪田さん、あなたにそのレインジャーのひとりになってほしいのです。」

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# by kftkubo | 2013-06-05 18:56 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 29

カズさんからの手紙 29
(この物語はフィクションです。)

カーティス・クリーク

自分を含め、釣師は釣れたいい話ばかりよくしているので、あやうく釣りは大自然の懐に抱かれ都合生活のストレスを忘れさせてくれる、なんて下手なコピーみたいな気持ちになってしまうところである。
つまりなんのことはない、さらにストレスをためてしまっているのである。
だからこそ黒駒湖が必要なのだ。
そうだ、どうなるのだろう黒駒湖の話は。
「そこで黒駒湖アングリングクラブの件なのですけどね、」
カズさんが静かな口調で切り出した。
「会員制という話は中止となったことは先程お話しました。
あまりにも特権的であまりにも閉鎖的ですからね。
古葉も同じ考えなのですが、結局私たちは釣りが好きですし、釣りが好きな人たちが好きなのです。
誰もが釣りを楽しめて、誰もが満足して帰れる。
数多くの人たちのカーティス・クリークになる。
これが私たちの希望なのです。
そしてこれが一番肝心なことなのですが、ここで釣りをした人たちは必ず何かを学んでほしい。
本物のアングラーとなって帰ってほしい。
湖自体をひとつのスクールとしたいのです。」

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# by kftkubo | 2013-05-28 14:18 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 28

カズさんからの手紙 28
(この物語はフィクションです。)

よみがえる辛い思い出

カズさんが続けて言った。
「だけど最近釣りが辛いなって思うことが時々あるのですよ。
それはつまりゴミや河川工事などによる環境問題のこととか。
釣れてくる魚に対しても。
いろいろなのですけどね。
とにかく釣れても釣れなくてもなにか空しさみたいなものが残るのです。」
「釣りに人生を捧げているから、彼は。
俺なんかほかが嫌になっちゃってここ以外では釣りをしなくなったよ。」
古葉さんが話題の割に陽気な声で言った。
僕は人生をまだ捧げていないけど、私的な時間のほとんどを捧げている。
「そうですね。
特に僕ら会社員は休みが土日に集中しているでしょう。
だからまず釣りに行くまでに交通渋滞という試練があって、そして次に釣り場に着いたらどんなポイントだろうと人のいないポイントに入るのがまたひと苦労ですね。
釣れそうだとかそんなこと関係ないのです。
とにかく混まないところに入るのです。
そしてたまに釣れる魚といえば、放流して間もない尻尾の丸いのばかり。
それと相変らずのゴミの山。
せめて自分が入ったポイントのまわりだけでも拾って行こうと思うのですけど、あまりの量にそんなことしても無駄なのだっていう無力感でいっぱいになってしまう。
結局ぐったりと疲れて帰ってくる。
そしてさらにズシッとくることが、渓流に行ってとってもいいポイントをみつけて大事に釣っていたところが、翌年には見る影もなく河川工事で変わっていたりすることなのです。
しかもそれが一度や二度じゃないのですからね。」
話しているうちにいろいろな辛い思い出がよみがえってくるようだ。

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# by kftkubo | 2013-05-23 19:33 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 27

カズさんからの手紙 27
(この物語はフィクションです。)

釣りが辛いと感じたことはありませんか?

「ところで窪田さん、」
カズさんがトイレから転がるように飛び出してきて口を開いた。
「釣りが辛いと感じたことはありませんか?」
僕はちょっと返事に困ってしまった。
釣れないことがイコール辛いということになるのなら、僕の釣りはまさに苦行僧の荒行のようなものかもしれない。
釣れない日々の繰り返しなのだから。
しかし自分の釣りは結果がすべてではないのだ。
あくまでも釣りをするその過程を楽しむものなのだ、と思っている。
そんな僕の気持ちを見透かしたようにカズさんが言った。
「確かに釣りに行く前日ほど、釣りという行為の中で楽しい時間はありませんね。
とくに解禁日前夜のあの気分。
何度味わってもいいものです。
そして釣行後の仲間たちとの釣りの四方山話。
たとえ釣れなくても釣りの楽しさをしみじみ思うひとときですよね。」
「釣りに行ったときのすきっ腹にしみる酒の味。
ちょっとコゲのついた飯のうまいこと。
そして焚き火の火。
これらも、釣れない自分を大いに慰めてくれるねー。」
古葉さんがちょっと酔った声で口をはさんだ。

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# by kftkubo | 2013-05-16 20:02 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 26

カズさんからの手紙 26
(この物語はフィクションです。)

その前にトイレに

「さて、先程古葉が言った私の立案なのですが、大勢の人間にこの湖を開放しつつ、しかも自然を今のままに保つ方法があったのです。
それはですね……すみません。
その前にトイレに。」
あわただしく席を立つカズさんを横目で見ながら古葉さんが一言ぽつりとつぶやいた。
「ああいう奴です。」
僕がプッと吹きだすと、古葉さんも笑いながら立ち上り窓際に行き、先程からビールからかえたストレートのバーボンウイスキーの入ったグラスで窓の外を指すと言った。
「素適な星空ですよ、窪田さん。」
確かに美しい星達だったけど、それより僕にはカズさんの素晴しいアイディアの続きが気にかかって仕方なかった。
どんな事なのだろう。
そしてこれから先も僕はこの黒駒湖に来られるのだろうか。
古葉さんが低い声で鼻唄を唄っている。
暖炉でバチッと木のはぜる音がしている。
柱時計は午後10時25分を指していた。

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# by kftkubo | 2013-05-07 22:01 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 25

カズさんからの手紙 25
(この物語はフィクションです。)

カズさんの話

何だか話は僕の予期せぬ方向へと進んでしまっている。
暖炉の炎にすっかりあぶられビールの酔いがますますまわってきて、どんな話にも今なら納得できてしまいそうだった。
そんな僕にカズさんが冷たい水を渡してくれつつ、古葉さんのガンガン頭にひびく大河の流れの様な太い声とは逆に、小川のせせらぎの様な涼しい声で話しかけてくれた。
「私や古葉、それに数名の仲間達で、今までに何度か自分達の理想の釣場を作ろうと何ヶ所かの川や湖で放流や清浄作業など地道な行動をしてきました。
しかし、ことごとく失敗に終ってしまいました。
原因はいろいろありました。
たぶん窪田さんなら想像がつくと思います。
そんな時に私達に本当に守り育てるに値する湖が手に入ったのです。
何よりも私がうれしかったことは、水源地も古葉の土地になっていたということです。
それにこの黒駒湖にはたくさんの湧水もあるのです。
つまりどんな開発がまわりで行なわれようともこの蒼き黒駒湖は不滅なのです。
まあ古葉が欲に走らない限りですけどね。」
「うーん、つらいなあー。」
古葉さんがおどけた様に口をはさんだ。

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# by kftkubo | 2013-05-02 06:45 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 24

カズさんからの手紙 24
(この物語はフィクションです。)

計画変更

ビールの酔いで麻痺してしまった僕の頭では急激な話の展開についていけなかった。
顔にはまだ、笑顔のなごりがはりついていたけれど、やはり目元に表われる不審の表情は隠せなかった様で、それを見てとったコバさんが、先程までの酔った口ぶりから一変し、恐い位の毅然とした顔で話し出した。
「嘘と言うのは…言い過ぎです。
最初にお話した様な会員制の釣り倶楽部の件は本気で考えていたことなのです。
でも計画が変ったのです。
素晴しい環境の中で尊敬に値する友人達と、驚嘆に値する鱒を釣る、そんな倶楽部を作る事が私の夢でした。
それに会員の制度とは、自分の湖を持つなどという、釣師としては最高の幸福を手に入れた男の、当然の義務と考えていました。」
「しかし、最初に波瀬からも話してあると思うのですが、この小さな湖ではどんなに無理をしても1,000人の倶楽部員で限界です。
それ以上の人間が入るとただの自然の中の管理釣場となってしまうでしょう。
結局1,000人の人間だけが秘かに楽しめる特権階級的釣り倶楽部にするしかないのです。
しかも会員の人選をするのはこの私と波瀬です。
何かいけない方向へ進んでしまいそうな気がしたのです。
1,000人の為だけの釣り倶楽部、それもいいかな、なんて思ったのですが。
やはりもっと大勢の人達にこの湖の美しさを見てもらいたいし、本当の鱒達のファイトを味わってもらいたいのです。
それでとてもいいアイディアが波瀬から出たのです。
そして、是非その件についてあなたの協力が必要なのですよ、窪田さん。」

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# by kftkubo | 2013-04-26 06:58 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 23

カズさんからの手紙 23
(この物語はフィクションです。)

会員制の釣り倶楽部の話も実は嘘なのです

とりとめのない話が一段落したところでカズさんが、夕食を持って現れた。
割烹着をした小柄なカズさんが料理を持ってくると、失礼な話、まるで民宿のオバさんみたいでとてもおかしい。
湖の幸や山の幸のそれぞれの魅力を生かした夕食を食べながら、僕はずっと言いだせなかった決意を口に出してみた。
「こんな時になんなのですけど、僕は是非というか絶対と言うべきか、こちらの倶楽部に入会させてほしいのです。
それで、入会費と言うか会員証って言うのですか。
その代金はいつお支払いすればいいのでしょうか。
分割なんかはしてないですよね。」
たぶんその時僕は血走った眼でご飯粒を口から飛しながらわめいていたのだと思う。
もう僕はその時夢が手に入りかけていると思っていたから必死だった。
ビールの酔いも手伝ってまさにつかみかからんばかりの勢いだったらしい。

カズさんと古葉さんは顔を見合わせるとちょっぴり苦笑しつつ、軽くうなずきあった。
そしてカズさんが口にした言葉は、充分に僕を驚かせてくれた。
「お金なんていらないのですよ、窪田さん。
会員制の釣り倶楽部の話も実は嘘なのです。」
その時僕はどんな顔をしていたのだろうか。
思考力がいったん停止してしまったようであった。

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# by kftkubo | 2013-04-22 19:16 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 22

カズさんからの手紙 22
(この物語はフィクションです。)

コバさんとカズさんの釣り

さらに話をしているうちに、古葉さんとカズさんの釣りに対する態度が全く違っているのに驚かされた。
まずカズさんは、まさに釣りそのものが人生の様な人なのである。
黒駒湖ではほとんど毎日竿を振っているにもかかわらず、主要な湖の解禁日には必ず顔を出している。
釣り方もフライフィッシングを筆頭にルアー、渓流のミャク釣り、鮎、海となんでも好きで、加えてどの釣りに対しても研究熱心であると言う。
まさに「釣りに人生を捧げた男」 (これはコバさんの言葉)である。

それに対してコバさんは、自称究極のフライフィッシャーマンなのだそうである。
何が究極かと言うと、美しい黒駒湖畔でビールを飲みつつうつらうつらと湖面を眺めているうちに頭の中で鱒達が跳ねだした。
そして必ずその中の一番大きな奴がコバさんのロッドを引き絞り、充分そいつと遊びそしてそっとリリースをしたところで我にかえる。
いつかあたりはどっぶりと暮れていて、コバさんは一度も竿を振らず帰って来るのだそうである。
そう言ってコバさんは気持ちよさそうに笑うと、次は少し真顔になって、僕は釣りそのものよりも、釣りのある人生が好きなのです。
と、ちょっと酔いのまわった頭には哲学的で難解な気がする言葉でしめた。

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# by kftkubo | 2013-04-16 07:40 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 21

カズさんからの手紙 21
(この物語はフィクションです。)

黒駒湖での釣りの話

精一杯の僕の感激の言葉に、
「そのつもりです。」
と古葉さんは、真顔で答えた。
そして笑顔になった。
テーブルの上のつまみは、自家製の燻製や山菜の漬け物などで、しかもどれもがとてもおいしい。
特に黒駒湖の鱒達の冷燻は極上のスモークサーモンにも負けないだろう。
「ところで波瀬さんは一緒に飲まないのですか。」
先程から姿が見えないカズさんの行方を訊ねた。
「あいつは、酒は飲まないのですよ。
たぶん今頃キッチンでうまい夕食を作っていますよ。
あいつの趣味は釣りの次は料理ですからね。
もっともすでに趣味の域ははるかに越えていますけどね。
うまいですよ。
今、食べてらっしゃるつまみもみんなあいつが作った物です。」
夕食が出来るまでビールを数本空にしつつ、古葉さんといろいろな話をした。
もちろん話の中心は黒駒湖での釣りの話である。
そして黒駒湖に今の様に鱒が定着してからというもの釣りに対してはもちろん仕事や家族、そして人生そのものに対して余裕を持って接することが出来るようになった、なんていう話をしてくれた。

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# by kftkubo | 2013-04-07 15:11 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 20

カズさんからの手紙 20

ここは天国ですか

その日黒駒湖はかなり寒かったらしい。
生れてはじめての50cmオーバーを釣りあげて僕は興奮していたらしく、夕暮の北風さえ心地よく感じていた。
しかし、ログハウスのあかりが見え出した頃から急に寒さが襲ってきた。
扉をあけた途端、体を包み込んだ暖かさは心底うれしかった。
鱒をカズさんに預け、手を洗ってリビングに戻ると、古葉さんが暖炉の例の一番暖かい椅子を勧めてくれた。
「どうでした。ここの鱒は。」
そう言いながら一人で飲んでいたビールを僕のコップに注いでくれた。
「す、すごいです。でも欲を言えばもう少し余裕を持って釣りたかったですね。
ファイトしている間、ずっと頭の中が炸裂していてほとんど憶えていないのです。」
そんな返事をしつつビールを口に運んだ。
鱒とのファイトで興奮した体を北風が冷やしてくれた。
そして冷え過ぎてしまった体を今度は暖炉がほぐしてくれた。
そして更に、先程のファイトが暖炉の火の前で、しつかりと甦って、また熱くなってきた僕の体に泌みる冷たいビールが、これはもう叫びたい位うまかった。
「ここは天国ですか。」

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# by kftkubo | 2013-04-01 07:37 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 19

カズさんからの手紙 19
(この物語はフィクションです。)

素晴しき一日の終わり

秋の陽はすでに暮れかかってきていた。
何度も言うようだけどここの景色は最高に美しい。
特に陽が沈みかかったこの瞬間は凄みさえ感じる美しさだ。
紅葉と夕陽で真紅に染った山並と、それを写して深く紅い黒駒湖。
カズさんが〝里の秋〟をへたくそな口笛で吹きつつタックルを片づけている。
その背中が何故か変に懐かしくてならなかった。
そうまるで少年時代の友人の様に。
薄暗くなった帰り道。
僕は手にさっきの鱒をぶらさげてとても満ちたりていた。
何だかずっと昔の子供の頃にもこんないい気持ちの帰り道があったような気がする。
汚れたズボンのポケットにはジャラジャラと小銭が入っていて、片手にはその日の獲物のクワガタやらセミやらがしっかりと握られていた。
カズさんとの尽きない釣りの話。
今夜は本当に泊めもらおう。
もっともっとここにいたい。
そしてもっとこの人達と話をしてみたい。
ログハウスでは暖かい部屋の中で古葉さんとあの狼犬が待っているのだろうな。
湖で大きなライズの音が聞えたのは気のせいだったろうか。
黒駒湖の素晴しき一日は終わろうとしていた。

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# by kftkubo | 2013-03-27 08:10 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 18

カズさんからの手紙 18
(この物語はフィクションです。)

見果てぬ夢

かなりの時間がたった様な気がした。
カズさんのヒンヤリした手が僕の手を握っている。
「おめでとうございます。」
僕は放心状態で足元に横たわる、55㎝紫色の帯が輝くスーパーレインボウを見た。
「ちょっと遊ばせ過ぎでしたね。
こいつは全力を出し切ってしまったから、もう放しても無理でしょうね。
窪田さん責任とってやって下さいね。」
僕がまだ放心状態が続いていて、言っている意味がわからずポカッとした顔をしていると、
「今夜は泊っていって下さいよ。
こいつがメインディッシュになりますから。
うまいですよ。」
といいつつ僕の生れてはじめての50㎝オーバーのネイティブ トラウトは、早くもしめられ、お腹をさかれてしまっていた。
悲しそうな僕の表情を誤解したのかカズさんが言った。
「このサイズの鱒になるとほとんど敵はいないのです。
だからこうして時々私達の食卓にのる事も必要なのです。
つまり間引きとでも言うのかな。」

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# by kftkubo | 2013-03-23 07:33 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 17

カズさんからの手紙 17
(この物語はフィクションです。)

ネイティブ レインボウ50㎝オーバー

「そらキターッ!」
反射的に大あわせをしたと思う。
そう確かに大あわせだったはずだ。
なのに、ロッドが立たない
それどころか手元にあまっていたラインがスルスルと手の中をすり抜け、リールのドラックがはげしく鳴って更にラインがもっていかれた。
「ロッドを左手に持ち替えて、右手でリールにドラックをかけて下さい。」
カズさんの声がとんだ。
これか。
よく海外の釣り雑誌で見るシーンだ。
それを今、僕がやっているのだ。
うれしくて頭の芯が痩れてきた。
紅葉の山並をバックにそいつがジャンプした。
「50㎝オーバー!レインボーですよ。窪田さん。」
ヒェー、僕にとっては未体験ゾーン。
手のヒラが熱い。
ロッドを持つ手が痩れてきた。
ライン、ロッド、リールと伝わったそいつのパワーが僕の体全体に強い生命力をぶつけてくるようだ。
再びジャンプ、そして流れを登って行く。
その度に僕は「うわっ、とっと。」なんておかしな声を発しつつ、へっぴり腰で防戦一方だった。
それでも疾走は止った。
僕は釣ってしまうのだろうか。
見果てぬ夢、ネイティブ レインボウ50㎝オーバー。

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# by kftkubo | 2013-03-17 17:29 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 16

カズさんからの手紙 16
(この物語はフィクションです。)

「フィッシュ オン」

「ちょっと早いのですネ。
極端な話向うあわせでいいのですよ。」
気をとり直してもう一度キャストする。
そしてうまくメンディングもこなしたぞ。
流れにゆられてモジモジと流されて行くカメ虫をうまく演出出来ていると自負。
ほうらとってもおいしそうなカメ虫だよ。
それ出ろ、ガポッと行け、どうした。
そんな思いを声にならない一人言でつぶやきつつじっと水面を見つめる。
秋の午後の日射しはギラギラと目にまぶしい。
ちょっと視線をはずし紅葉の山並を眺めつつ数度まばたきをした。
そして軽く深呼吸。
っと、その時ガポッというライズ音と鋭いカズさんの声がとんだ。

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# by kftkubo | 2013-03-12 07:43 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 15

カズさんからの手紙 15

ナチュラルドリフト

ライズがちょっぴり離れてしまった様だ。
カズさんの指示するポイントにフライを流そうとしているのだけれど、流れ込みの水量は結構多い様ですぐに僕の緑のタワシにドラッグがかかってしまうのだ。
さっきはもっと流れの手前でライズしていたのに、今の騒ぎで流れの向う側ばかりライズしている。
「窪田さん、メンディング、メンディング。」
カズさんがあたり前の様に言う。
それは分っているけど………。
所詮はインドアフライフィッシャーマン。
小技がきかない。
きちんと練習しときゃよかったな。
それでも数回のキャストのうち何度かはメンディングもうまくいき、ナチュラルドリフトでおいしそうに流れていってくれた。
そして数度のアタリ。
しかし、のらない。
本当に大きな音をたててアタックしてくるのだけれどのらない。

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# by kftkubo | 2013-03-07 07:59 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 14

カズさんからの手紙 14
(この物語はフィクションです。)

ネイティブ ブラウン 44㎝

余裕あるなあ。
僕だったら40㎝オーバーのブラウンなんてかけたら目はチカチカ、息はゼェゼェだろうに。
そして数分後、彼の足元に横たわったのは44㎝。
目を見張るほど美しいブラウントラウトだった。
「こいつは完全にこの湖生まれの鱒ですね。
ほら見て下さい。
ネイティブのブラウンだからこのヒレが異様に大きいでしょう。」
そう言ってカズさんは油ビレの反対に付いている付け根の尻ビレを軽く引っ張ってみせた。
鱒を大切に湖に返すと僕の方を振り返り、
「さあてと、すみませんでしたね。
どうも私はこの湖に向かうとまず勝負したくなってしまって。
一匹釣らないと余裕が出てこないのですよ。
その日の最初の一匹って大切ですからね。」

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# by kftkubo | 2013-03-04 07:20 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 13

カズさんからの手紙 13
(この物語はフィクションです。)

正体は「カメ虫」

「さわらない方がいいですよ。」
そいつをつまもうとしたとき、カズさんの声がとんだ。
「カメ虫ですよ。つかむとしばらく臭いがとれませんからね。こいつは。」
そうか。
この毛針はこいつのイミテーションだったのだ。
「でもどうしてこんなにカメ虫が落ちてくるのですか。」
「今が彼等の交尾期なのです。
窪田さんはいいときに来ましたよ。
今日みたいな秋のいい日に、いわゆるカメ虫のスーパーハッチがあるのですが、まさに今日はその日というわけなので…キターッ!」
 会話の途中の突然の大声に、僕はビックリして彼の方を見ると彼のロッドがググーンと根元から曲がっていた。
「けっこういい型ですね。
40cmは越えているかな。
ブラウンですね。
5番ロッドだからおもしろいですよ。」

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# by kftkubo | 2013-02-23 22:02 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 12

カズさんからの手紙 12
(この物語はフィクションです。)

湖面のライズ

驚いたことに真っ昼間だっていうのに、湖面がやたらと賑やかである。
カズさんの前の水面でも盛んにライズしているらしく、その度に「ヤヤッ」とか「ウヒャッ」とかおかしな叫び声を発している。
何にそんなにライズしているのか、じっくり見てみることにした。
ライズは流れ込みの流芯を中心に半円を描く様に広がっているようだ。
ということは何かが川の上から落ちてきているのだろう。
ギリギリの水際まで近づいてみる。
カズさんのラインがビュンビュンと音を立てて空を切る。
キャスティングフォームは荒々しいけれど的確にポイントに向かってラインの先端が近づいていく。
視線をずらして上流を見てみる。
偏光グラスが無いのでよく見えないのだが、かなり大きな甲虫のようなものがモジモジと動きつつ相当数流れてきていて、鱒たちはそれにアタックしているらしいのだ。
ちょっと手の届きそうなところへ、そいつが手足をバタつかせ漂ってきたのでフライロッドで引き寄せてみた。

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# by kftkubo | 2013-02-16 19:10 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 11

カズさんからの手紙 11
(この物語はフィクションです。)

ログハウスから湖まで

ログハウスから湖までは、ゆっくり歩いて5分くらいの距離だそうだ。
白樺の多い林の中は、若干の上り坂になっている。
10月といえばまだ枝にはしっかり色づいた葉が付いていて、林の中に入るとかなり薄暗く、また、上り坂の為ほとんど下を向いて歩いていた。
林と砂浜の境が坂の頂になっていて、そこに立った途端に十月の眩しい日ざしに輝く駒黒湖が素晴らしい紅葉をバックに、圧倒的な強さで目に飛び込んできた。
大切に守られてきた世界がここにはあるのだな。
こんな場所でこんな日に釣りができるなんて。
僕の心はそれだけで満たされてしまったようだ。
今度は渚まで下り坂になっている砂浜を一気に駆け降りる。
すでにカズさんはロッドにリールをセットし始めていた。
「右手に見えるのが大前川の流れ込みで一番のポイントになります。
そしてさらにその先50mくらいに、もう一本小貝川の流れ込みがあり、まあそちらが第二のポイントでしょうか。
他にもいいポイントはいくつかありますが、今日のところは時間もないし、とりあえず手前の流れ込みでやってみましょう。」
カズさんは毛針までセットしてくれたフライロッドを僕に手渡すと、猫背気味の後ろ姿を残しつつ静かに素早くポイントへと歩いていった。
カズさんから手渡されたロッドはS社の9f-7番ロッドであった。
さらにリールはH社のものであり、ラインはフローティングラインが巻かれてあった。
僕には少々素晴らしすぎる道具のようだ。
そして肝心の毛針はというと、緑色の小さなタワシとしか見えない代物が、チョコンとフックキーパーにくっついていた。
偏光サングラスをかけた表情は窺い知れないが、カズさんはすでにフォルスキャストを始めていて、視線は湖面に注がれている。
僕の存在など忘れているようだ。
彼の釣りをしばらく眺めて見ることにした。

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# by kftkubo | 2013-01-31 19:25 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 10

カズさんからの手紙 10
(この物語はフィクションです。)

会員証は100万円

今の僕にそれが多いのか少ないのかはわからなかった。
お金の計算をするのは何だけど、例えば今後10年間、1年に10回ずつここへ通ったとすると百回。
会員証は100万円。
宿泊は無料、飲食費のみ。
決して無理のないところなのだろう。
年に10回位がカーティス・クリークたる所以かもしれないし。
そんなせせこましい計算をぶっとばしたのが壁に掛かっている剥製である。
あたかも水面からジャンプしたかのような姿の黒駒湖の王者。
「レインボートラウト75cm
釣入 波瀬 和之
2030年6月8日
尻尾岩先端にて」
鋼板プレートにはそう刻まれている。

「では、ちょっとやってみましょうか。」
コーヒーを飲み終えたカズさんが立ち上がった。
壁に掛かっているロッドを二本取ると、ネービーのワッチキャップをかぶりブルーのウィンドブレーカーを着た。
その背中にトラウトのイラストと『黒駒湖アングリング倶楽部』の文字が白く書かれてあった。
僕はちょっとよろけるように立ち上がると眼鐘の曇りをふきとりながらその後を追った。
バルコニーでは例の狼のような犬が小首をかしげて見送ってくれた。

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# by kftkubo | 2013-01-28 17:46 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 9

カズさんからの手紙 9
(この物語はフィクションです。)

ログハウスにて

出来すぎかな、あまりにも。
そんな思いを見透かしたかのようにカズさんが声をかけてきた。
「照れちゃいけないのですよ。
私達は、私達が心の中に描いている理想境を具現化したいのです。
ここにいる間は、この世界はすべて私達だけのものです。
そして何よりもこの世界は現実に存在しているということが一番大切なことなのです。」
ログハウスの扉を開けると、僕はとても懐かしい気分になってしまった。
なぜだろう。
暖炉があり木製のベンチ、それにロッキングチェアーが数脚、本棚、食器棚。
電化製品といえばオーディオセットとライト位であろうか。
もちろん奥には冷蔵庫などもあるのだろうけど。
「このログハウスは最高30名までが泊まることができます。
つまり逆に言えば、宿泊可能な人数でしか湖で釣りをすることができないわけなのです。」
古葉さんが僕に椅子を勧めながら言った。
初対面で、紅葉カラーと第一印象で感じたのはオレンジと茶色のバッファローチェックのシャツが主な原因であるらしい。
「ですから、湖で出合う人間はどんなに多くても30人です。
その詳しい規約は後で波瀬より説明があると思いますが、会員の方がここに来られる回数は1年間に10回以内としたいのです。」

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# by kftkubo | 2013-01-24 22:00 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 8

カズさんからの手紙 8
(この物語はフィクションです。)

黒駒湖にて 

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車から降りるとひんやりとした空気が僕を包んだ。
黒駒湖は既に初冬のにおいがした。
僕はこの季節が一番好きだ。
夏に伸び切ってしまったような空気が少しずつ緊張感を高め、ピーンと張りつめたギターの弦の様にこの季節には高音がよく似合う。
僕の心の弦もたちまち張りつめてくる。
それにしても今日は少し暖かめの格好をしてきて良かった。
ウールのシャツとダウンベストが今はとっても有り難い。
「とりあえずあちらでコーヒーでも飲みましょう。」
古葉さんの指す方向に大きなログハウスがあった。
ログハウスに近づくとバルコニーのあたりから何か大きな動物がこちらに向かってくる。
犬だ。
まるで狼のような大きな犬が、古葉さん目がけて走ってくる。
そしてヒゲ面の大男の古葉さんとその大犬が抱きあいじゃれあっている。
そのバックにはログハウスがあり、その右手方向には美しく紅葉した天然林が広がり、左手にはベージュの湖岸、青き黒駒湖が広がっている。
そしてすべてを見下ろす形で紫色の山並みがあるのだ。
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# by kftkubo | 2013-01-20 18:38 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 7

カズさんからの手紙 7
(この物語はフィクションです。)

「黒駒湖」の話

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古葉さんとしては個人の資産としての湖や山には執着はないこと。
最近の日本では少なくなってしまったブナ・ナラの雑木林の山を手付かずで残すには私立の公園という形しかないと考えているらしいこと。
ところが山火事などの自然災害や密猟・漁などの人的災害を防ぐための私設レインジャーが十名は必要なところ、現在カズさんのほか2名とのこと。
湖の管理だけで精一杯といった現状であるらしいこと。
かかった経費などで一億円近い借金もあるらしいこと。
話を聞くと深刻な問題を抱えているようなのだが、カズさんは淡々と話し、古葉さんは時折相槌を打ちながら口をはさむが、他人事のような口調であった。
しかしその中にも二人の情熱が感じられた。
きっと二人は好い人なのだろうな、もちろん友人の紹介だから信用はしているけど。
この車の中の雰囲気のようなクラブなのだろうと思った。
もうすぐ黒駒湖に着くらしい。
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# by kftkubo | 2013-01-17 07:35 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 6

カズさんからの手紙 6
(この物語はフィクションです。)

古葉さんとカズさん

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車の中で開いたことは次のようなことである。
オーナーの古葉さんとカズさんは小学校からの同級生であり、ともに37歳になる。
古葉さんの家はこの辺では有数の名家らしく、これから行く黒駒湖とその周辺の山林はすべて古葉家の私有地なのだそうである。
そして2年前に古葉さんの父上が他界しかなりの財産が残されたこと。
次男の古葉さんは釣りと自然保護に強い関心を持っていることもあり、黒駒湖と周辺の雑木林の山を相続した。
そしてフライフィッシングの師でもあるカズさんや仲間の協力を得て、従来岩魚と山女魚がチラホラとしか釣れなかった湖にレインボートラウトやブラウントラウトを定着させ仲間内で楽しんでいたが、管理の限界を感じたこと。
もっと広く同志を募り交流を深め、自然保護とフィッシングを両立させようということになったこと。
それには会員数は1,000人が限度であり、1人100万円の出資で十分に賄えるということ。
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# by kftkubo | 2013-01-14 15:09 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 5

カズさんからの手紙 5
(この物語はフィクションです。)

カズさんとの出会い

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昼食を平らげ頭の中で独り言をつぶやいていると、ディーゼルの音とともに青いランドクルーザーが目の前に止まった。
運転席と助手席から2人の男が降りてきた。
僕の視界の中に男たちの服の色が強烈に飛び込んできた。
運転席の男がブルー系、助手席の男が紅葉カラーであった。
ブルーの男が口を開く。
「窪田さんですか?私が波瀬です。「カズ」と呼んでください。そしてこちらはオーナーの古葉です。」
紅葉カラーの男が手をさしのべる。
「始めまして。古葉です。」
さっそく車に乗り込む。
「ここから約1時間の道のりです。」
古葉さんが振り返らずそう僕に告げた。
バッファロースプリングフィールドの『ブロークン アロウ』がかすかに流れていた。
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# by kftkubo | 2013-01-11 18:00 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 4

カズさんからの手紙 4
(この物語はフィクションです。)

なぜかk駅の駅前広場

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無人の改礼口を出ると、確かに駅前はちょっとした広場になっており、大きな銀杏の木はその葉を黄色く色づかせている。
とりあえずその木の下のベンチに腰を下ろし、列車の中の読書で凝ってしまった肩を交互にくるくると回してみる。
見上げると、空は青くどこまでも高い。
足の早い雲が視界を横切っていく。
まるで宮崎駿のアニメに出てくる空のようだ。
僕は子供の頃、秋になるといつもこんな空を見ていたような気がする。

気がつくと少々お腹がすいてきた。
向い側のスーパーとコンビニエンスと雑貨屋を足して3で割ったような店でパンと牛乳を買い昼食にする。
遠くで昼を告げるサイレンが鳴った。
12時10分前。
それにしても人気のない広場だな。
それにやたら猫が多い。
さっきの店のおばさんもなんか猫みたいだったなあ。
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# by kftkubo | 2013-01-08 13:17 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 3

カズさんからの手紙 3
(この物語はフィクションです。)

二通日の手紙

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あの不思議な手紙が届いてから約1ヶ月がたっていた。
うんざりするような残暑もようやく終わりを告げようとしている頃であった。
2通目の波瀬さんからの手紙が来た。
今度の手紙は前回と違いワープロで、待ち合わせ時間などの用件だけが書かれてあった。
ビジネスライクなその文字は、具体的になっていく今回の話に妙な真実味を持たせる。
でもなぜか僕は前回のようなファンタジックというか眉ツバ物というか、どことなく現実離れした気分にさせてくれる波瀬さんの手書きの手紙のほうが好きだったのであるが。
「10月の第1日曜日、K駅の駅前広場にある大きな銀杏の木の下のベンチで午後12時に待て」とのことであった。
列車は1時間に1本くらいしかなく、結局45分も前に着いてしまった。
よく考えると自分は客の立場であるはずなのだ。
そんな自分が何だか少しばかり腹立たしくもありおかしくもあった。
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# by kftkubo | 2013-01-04 22:21 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 2

カズさんからの手紙 2

2031年 暑い夏休み

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 2011年東日本大震災の時に15歳だった僕は自分が35歳になるなんて本当に信じられなかった。
いまだに鳥獣虫魚や恐竜、宇宙のことなどが大好きで、子供の頃と少しも変わらないような気分の自分が35歳になるなんて、自分が結婚し、親になったことと同じくらい信じられなかった。
1週間の夏休み初日、1歳の息子をからかいながらそんなことを考えていた。
 その日はものすごく熱い日で、その暑さに加えて、やたら元気な息子の子守りで僕はすっかり参ってしまい、犬のようにぜいぜいと熱い息を吐きながら、扇風機の前にゴロゴロしていた。
明日からは家族旅行も計画しており、しばらくはこの苦しみから逃れられそうもないな、なんて思いながらもその後の友人との釣行に備えて、汗をかきかき毛針やリーダーのチェックなどしてしまうのであった。
 そんなとき、転がるような足元で息子が一通の手紙を持ってきた。
 お世辞にもうまいとは言えないけど、いかにも人が良さそうな筆跡の長い手紙だった。
要約すると「黒駒湖」という釣り場を、礼儀正しい3,000人のフライフィッシャーマンで共同購入し、日本の釣り場ではもうほとんどお目にかかれないネイティブな鱒を、少人数だけで楽しもうという倶楽部に入会しないか、ということだ。
 その夜、僕のフライフィッシングの先生であり長年の友人でもあり、さらに今回の件の推薦人でもある佐藤さんに電話した。
 大学時代のサークルの先輩で、まだ独身で僕なんかよりずっと収入の多い佐藤さんは、すぐにその話に飛びつき会員になったようだ。
実際に現地に行って来たという。
 黒駒湖というのは信州のY県にあり、ちょうど日光の湯の湖の1/5くらいの大きさの個人所有の小さな湖(人造湖)であるという。
さらに佐藤さんは試し釣りをさせてもらい、今まで見たこともないようなキレイな50cmオーバーのニジマスを釣り上げたという。
「もう俺は3年後のためだけに日々を生きているのだ。」なんて言いやがった。
 まだ不明な点はたくさんあるが、確かに魅力的な話である。
その話が本当なら100万円というお金は決して高くはないだろうとも思う。
もちろん、現在の僕にとってはかなり苦しい金額であることは確かだが。
 よしっ! とりあえず波瀬さんと会ってみよう。
そしていろいろな疑問を問いただしてみようと、そのやたらに暑い日の夜決意したのであった。
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# by kftkubo | 2012-12-31 07:35 | カズさんからの手紙 | Comments(0)