フィッシャーマンのためのフィッシングカフェ


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カズさんからの手紙 21

カズさんからの手紙 21
(この物語はフィクションです。)

黒駒湖での釣りの話

精一杯の僕の感激の言葉に、
「そのつもりです。」
と古葉さんは、真顔で答えた。
そして笑顔になった。
テーブルの上のつまみは、自家製の燻製や山菜の漬け物などで、しかもどれもがとてもおいしい。
特に黒駒湖の鱒達の冷燻は極上のスモークサーモンにも負けないだろう。
「ところで波瀬さんは一緒に飲まないのですか。」
先程から姿が見えないカズさんの行方を訊ねた。
「あいつは、酒は飲まないのですよ。
たぶん今頃キッチンでうまい夕食を作っていますよ。
あいつの趣味は釣りの次は料理ですからね。
もっともすでに趣味の域ははるかに越えていますけどね。
うまいですよ。
今、食べてらっしゃるつまみもみんなあいつが作った物です。」
夕食が出来るまでビールを数本空にしつつ、古葉さんといろいろな話をした。
もちろん話の中心は黒駒湖での釣りの話である。
そして黒駒湖に今の様に鱒が定着してからというもの釣りに対してはもちろん仕事や家族、そして人生そのものに対して余裕を持って接することが出来るようになった、なんていう話をしてくれた。

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by kftkubo | 2013-04-07 15:11 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 20

カズさんからの手紙 20

ここは天国ですか

その日黒駒湖はかなり寒かったらしい。
生れてはじめての50cmオーバーを釣りあげて僕は興奮していたらしく、夕暮の北風さえ心地よく感じていた。
しかし、ログハウスのあかりが見え出した頃から急に寒さが襲ってきた。
扉をあけた途端、体を包み込んだ暖かさは心底うれしかった。
鱒をカズさんに預け、手を洗ってリビングに戻ると、古葉さんが暖炉の例の一番暖かい椅子を勧めてくれた。
「どうでした。ここの鱒は。」
そう言いながら一人で飲んでいたビールを僕のコップに注いでくれた。
「す、すごいです。でも欲を言えばもう少し余裕を持って釣りたかったですね。
ファイトしている間、ずっと頭の中が炸裂していてほとんど憶えていないのです。」
そんな返事をしつつビールを口に運んだ。
鱒とのファイトで興奮した体を北風が冷やしてくれた。
そして冷え過ぎてしまった体を今度は暖炉がほぐしてくれた。
そして更に、先程のファイトが暖炉の火の前で、しつかりと甦って、また熱くなってきた僕の体に泌みる冷たいビールが、これはもう叫びたい位うまかった。
「ここは天国ですか。」

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by kftkubo | 2013-04-01 07:37 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 19

カズさんからの手紙 19
(この物語はフィクションです。)

素晴しき一日の終わり

秋の陽はすでに暮れかかってきていた。
何度も言うようだけどここの景色は最高に美しい。
特に陽が沈みかかったこの瞬間は凄みさえ感じる美しさだ。
紅葉と夕陽で真紅に染った山並と、それを写して深く紅い黒駒湖。
カズさんが〝里の秋〟をへたくそな口笛で吹きつつタックルを片づけている。
その背中が何故か変に懐かしくてならなかった。
そうまるで少年時代の友人の様に。
薄暗くなった帰り道。
僕は手にさっきの鱒をぶらさげてとても満ちたりていた。
何だかずっと昔の子供の頃にもこんないい気持ちの帰り道があったような気がする。
汚れたズボンのポケットにはジャラジャラと小銭が入っていて、片手にはその日の獲物のクワガタやらセミやらがしっかりと握られていた。
カズさんとの尽きない釣りの話。
今夜は本当に泊めもらおう。
もっともっとここにいたい。
そしてもっとこの人達と話をしてみたい。
ログハウスでは暖かい部屋の中で古葉さんとあの狼犬が待っているのだろうな。
湖で大きなライズの音が聞えたのは気のせいだったろうか。
黒駒湖の素晴しき一日は終わろうとしていた。

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by kftkubo | 2013-03-27 08:10 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 18

カズさんからの手紙 18
(この物語はフィクションです。)

見果てぬ夢

かなりの時間がたった様な気がした。
カズさんのヒンヤリした手が僕の手を握っている。
「おめでとうございます。」
僕は放心状態で足元に横たわる、55㎝紫色の帯が輝くスーパーレインボウを見た。
「ちょっと遊ばせ過ぎでしたね。
こいつは全力を出し切ってしまったから、もう放しても無理でしょうね。
窪田さん責任とってやって下さいね。」
僕がまだ放心状態が続いていて、言っている意味がわからずポカッとした顔をしていると、
「今夜は泊っていって下さいよ。
こいつがメインディッシュになりますから。
うまいですよ。」
といいつつ僕の生れてはじめての50㎝オーバーのネイティブ トラウトは、早くもしめられ、お腹をさかれてしまっていた。
悲しそうな僕の表情を誤解したのかカズさんが言った。
「このサイズの鱒になるとほとんど敵はいないのです。
だからこうして時々私達の食卓にのる事も必要なのです。
つまり間引きとでも言うのかな。」

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by kftkubo | 2013-03-23 07:33 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 17

カズさんからの手紙 17
(この物語はフィクションです。)

ネイティブ レインボウ50㎝オーバー

「そらキターッ!」
反射的に大あわせをしたと思う。
そう確かに大あわせだったはずだ。
なのに、ロッドが立たない
それどころか手元にあまっていたラインがスルスルと手の中をすり抜け、リールのドラックがはげしく鳴って更にラインがもっていかれた。
「ロッドを左手に持ち替えて、右手でリールにドラックをかけて下さい。」
カズさんの声がとんだ。
これか。
よく海外の釣り雑誌で見るシーンだ。
それを今、僕がやっているのだ。
うれしくて頭の芯が痩れてきた。
紅葉の山並をバックにそいつがジャンプした。
「50㎝オーバー!レインボーですよ。窪田さん。」
ヒェー、僕にとっては未体験ゾーン。
手のヒラが熱い。
ロッドを持つ手が痩れてきた。
ライン、ロッド、リールと伝わったそいつのパワーが僕の体全体に強い生命力をぶつけてくるようだ。
再びジャンプ、そして流れを登って行く。
その度に僕は「うわっ、とっと。」なんておかしな声を発しつつ、へっぴり腰で防戦一方だった。
それでも疾走は止った。
僕は釣ってしまうのだろうか。
見果てぬ夢、ネイティブ レインボウ50㎝オーバー。

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by kftkubo | 2013-03-17 17:29 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 16

カズさんからの手紙 16
(この物語はフィクションです。)

「フィッシュ オン」

「ちょっと早いのですネ。
極端な話向うあわせでいいのですよ。」
気をとり直してもう一度キャストする。
そしてうまくメンディングもこなしたぞ。
流れにゆられてモジモジと流されて行くカメ虫をうまく演出出来ていると自負。
ほうらとってもおいしそうなカメ虫だよ。
それ出ろ、ガポッと行け、どうした。
そんな思いを声にならない一人言でつぶやきつつじっと水面を見つめる。
秋の午後の日射しはギラギラと目にまぶしい。
ちょっと視線をはずし紅葉の山並を眺めつつ数度まばたきをした。
そして軽く深呼吸。
っと、その時ガポッというライズ音と鋭いカズさんの声がとんだ。

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by kftkubo | 2013-03-12 07:43 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 15

カズさんからの手紙 15

ナチュラルドリフト

ライズがちょっぴり離れてしまった様だ。
カズさんの指示するポイントにフライを流そうとしているのだけれど、流れ込みの水量は結構多い様ですぐに僕の緑のタワシにドラッグがかかってしまうのだ。
さっきはもっと流れの手前でライズしていたのに、今の騒ぎで流れの向う側ばかりライズしている。
「窪田さん、メンディング、メンディング。」
カズさんがあたり前の様に言う。
それは分っているけど………。
所詮はインドアフライフィッシャーマン。
小技がきかない。
きちんと練習しときゃよかったな。
それでも数回のキャストのうち何度かはメンディングもうまくいき、ナチュラルドリフトでおいしそうに流れていってくれた。
そして数度のアタリ。
しかし、のらない。
本当に大きな音をたててアタックしてくるのだけれどのらない。

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by kftkubo | 2013-03-07 07:59 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 14

カズさんからの手紙 14
(この物語はフィクションです。)

ネイティブ ブラウン 44㎝

余裕あるなあ。
僕だったら40㎝オーバーのブラウンなんてかけたら目はチカチカ、息はゼェゼェだろうに。
そして数分後、彼の足元に横たわったのは44㎝。
目を見張るほど美しいブラウントラウトだった。
「こいつは完全にこの湖生まれの鱒ですね。
ほら見て下さい。
ネイティブのブラウンだからこのヒレが異様に大きいでしょう。」
そう言ってカズさんは油ビレの反対に付いている付け根の尻ビレを軽く引っ張ってみせた。
鱒を大切に湖に返すと僕の方を振り返り、
「さあてと、すみませんでしたね。
どうも私はこの湖に向かうとまず勝負したくなってしまって。
一匹釣らないと余裕が出てこないのですよ。
その日の最初の一匹って大切ですからね。」

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by kftkubo | 2013-03-04 07:20 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 13

カズさんからの手紙 13
(この物語はフィクションです。)

正体は「カメ虫」

「さわらない方がいいですよ。」
そいつをつまもうとしたとき、カズさんの声がとんだ。
「カメ虫ですよ。つかむとしばらく臭いがとれませんからね。こいつは。」
そうか。
この毛針はこいつのイミテーションだったのだ。
「でもどうしてこんなにカメ虫が落ちてくるのですか。」
「今が彼等の交尾期なのです。
窪田さんはいいときに来ましたよ。
今日みたいな秋のいい日に、いわゆるカメ虫のスーパーハッチがあるのですが、まさに今日はその日というわけなので…キターッ!」
 会話の途中の突然の大声に、僕はビックリして彼の方を見ると彼のロッドがググーンと根元から曲がっていた。
「けっこういい型ですね。
40cmは越えているかな。
ブラウンですね。
5番ロッドだからおもしろいですよ。」

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by kftkubo | 2013-02-23 22:02 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 12

カズさんからの手紙 12
(この物語はフィクションです。)

湖面のライズ

驚いたことに真っ昼間だっていうのに、湖面がやたらと賑やかである。
カズさんの前の水面でも盛んにライズしているらしく、その度に「ヤヤッ」とか「ウヒャッ」とかおかしな叫び声を発している。
何にそんなにライズしているのか、じっくり見てみることにした。
ライズは流れ込みの流芯を中心に半円を描く様に広がっているようだ。
ということは何かが川の上から落ちてきているのだろう。
ギリギリの水際まで近づいてみる。
カズさんのラインがビュンビュンと音を立てて空を切る。
キャスティングフォームは荒々しいけれど的確にポイントに向かってラインの先端が近づいていく。
視線をずらして上流を見てみる。
偏光グラスが無いのでよく見えないのだが、かなり大きな甲虫のようなものがモジモジと動きつつ相当数流れてきていて、鱒たちはそれにアタックしているらしいのだ。
ちょっと手の届きそうなところへ、そいつが手足をバタつかせ漂ってきたのでフライロッドで引き寄せてみた。

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by kftkubo | 2013-02-16 19:10 | カズさんからの手紙 | Comments(0)