フィッシャーマンのためのフィッシングカフェ


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カズさんからの手紙 38

カズさんからの手紙 38
(この物語はフィクションです。)

素晴らしき構想

 「それにその利益は私たちのものではありません。
魚たちを育て、私たちに感動を与えてくれる自然をもっと増やすのです。
きっといろいろな動物たちも集まってくるでしょう。
リゾート開発とやらで、この辺も安住の地ではなくなっていますからね。
ここはいわば動物の掛け込み寺でもあるわけなのです。
早くたくさんの自然を取り込まないとすぐにゴルフ場にされちゃうのです。
ですからここでの費用なんてゴルフに較べれば安いものなのです。」
 「気の早い話ですけど、最初の利益でどこを買うのですか。」
「それはもうだいぶ以前から古葉と決めていました。
黒駒湖川下流の権利すべてとその河壕全域です。」
「そうだと思いました。
去年あの辺まで釣り下って感じました。
私たちの幸川から一歩下流に下るとすっかり渓相が変わってしまっているのですものね。ゴミもやたら多いですしね。
せめてS川との合流地点までは私たちで管理したいと思いました。」
「乱暴な手段もしれませんが、今やこれくらいやらないとだめなところまできているのです。」
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by kftkubo | 2013-09-01 16:37 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 37

カズさんからの手紙 37
(この物語はフィクションです。)

来年の4月2日

パーコレーターでカズさんがいれてくれた熱いコーヒーを飲みながら、僕はずっと疑問に思っていたことを聞いてみた。
「来年の4月2日には、お客さんは来るのですかね。」
「はい。既に100件近く予約が入っています。目標としてはのべ200人まではもっていきたいですね。つまり窪田さんたちが26日間来られて、一人ずつ担当してくださって260名です。まあ余裕をもって考えれば200名が限度というところですね。」
「料金はいくらくらいするのですか。」
「1日1万円と考えています。入漁料、ガイド料で各5千円といったところですね。」
「それは少々高くないですか。宿泊費とか会費は別でしょう。」
「そうですね、たぶん2泊3日で1人5万円くらいかかると思います。それでも一度来られた方はきっともう一度来て下さいます。その感じ、分かりますよね、窪田さん。」
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by kftkubo | 2013-08-22 21:10 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 36

カズさんからの手紙 36
(この物語はフィクションです。)

スタッフミーティング

 あれから約7ヶ月。月に2~3度は必ず全員がきちんと集まりミーティングを行ない、禁漁期間以外は釣りをし、様々な自然に接するための講習を受けた。
 講師は主にカズさんが務めたが、スタッフの中にもそれぞれ一芸に秀でた人がいて、植物に強かったり、昆虫、動物に詳しかったりして、その都度講師になってもらったりもした。
何よりも驚いたことにカズさんはレスキューの経験もあることである。
応急処置などを教えてもらい、自分でも日に日にレインジャーらしくなっていくようでとてもうれしかった。

 そして今日、例年よりも少ないという雪の季節が終り、黒駒湖に春が訪れ、解禁日を迎えたというわけである。昨夜は久し振りに全員が揃い、前夜祭ということで少々飲みすぎてしまったことでもあり、朝の釣行が各自満足のいく結果を得て、カズさんが 「お茶にしましょう。」と、みんなを誘った。その声でふと時計を見ると、9時30分。日もかなり高くなってダウンジャケットが少し暑いくらいになってきていた。
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by kftkubo | 2013-08-06 11:39 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 35

カズさんからの手紙 35
(この物語はフィクションです。)

3つの質問

 僕はカズさんに3つの質問をした。
① フライフィッシングのテクニックもほとんどないし、自然に対する様々な知識もない自分に果たして出来るのか。
② 26日間のいわゆる義務日数以外に、楽しみとして来てもいいのか。
③ 自分以外に何名くらいのボランティアスタッフがいるのか。
 答えは簡単だった。レインジャーは釣りに関してはあくまでもポイントと鱒の扱い方、フライの選択くらいにしか口は出さない。
何よりも大切なことは、釣り人から黒駒湖の動植物を守ることであり、それが主目的である。
いかにローインパクトに自然の中で遊ぶか、を教えるのだという。
それらのことは2年後の正式な解禁までにしっかりと覚えてもらう、とのこと。
 そしてもちろん、いつでも黒駒湖には来てもらって結構、ただし食事は自分で用意し、準備すること。
 ボランティアスタッフは現在、古葉さんとカズさんを除く10名。
その中には僕の友人の佐藤さんも入っている。
 僕はすぐにぜひやらせて下さい、と返事をしたことは言うまでもない。

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by kftkubo | 2013-07-24 18:30 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 34

カズさんからの手紙 34
(この物語はフィクションです。)

去年の9月

 去年の9月、あの夢のような2日間。
あの二日間が僕の人生を変えた、と言ったら大げさだろうか。
すべてはあのカズさんからの不思議な一通の手紙から始まった。
手紙を読んだだけで僕はすっかり黒駒湖のとりこになってしまい、実際に魅力的なネイティブの鱒や、カズさんや古葉さんと出会って、何が何でも倶楽部に入れてもらおうと思っていたところが、こうして新しい目的を目指す仲間たちの一員となっている。
「あなたの1年の休日のうち、26日間を黒駒湖アングリング倶楽部にください。」
古葉さんの太い声が今も僕の耳に起る。
4月2日から11月22日までのシーズンの間の26日間を釣り客のガイドを兼ねたボランティアのレインジャーになって欲しいと言うのだった。
当初それに対する報酬はないけれど商売として利益を生みだすことになれば、すべてこの黒駒湖周辺の自然を手に入れるための資金としたいということなのである。
つまり黒駒湖アングリング倶楽部は、手つかずの自然を自分たちの手で確保していき、それに賛同してくれるナチュラリストを増やしていく倶楽部なのだと。

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by kftkubo | 2013-07-11 22:21 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 33

カズさんからの手紙 33
(この物語はフィクションです。)

大前川の流れ込み

 そうだ、初めてこの湖で釣りをしたのもこのポイントだったっけ。
大前川の流れ込み。
あの時もカズさんがすぐに40cmオーバーのブラウンを釣って、その後すぐに僕にきたのだ。だから今日もカズさんは僕をこのポイントに誘ったのかな。
あの後いろんなポイントで、あの時よりも大きなサイズも何本か上げたけど、やっぱりここは僕にとって特別なポイントだ。
 初めて訪れた去年の秋のことを思い出しながらリトリーブする僕の手に軽くコツンとアタリがあった。
そしてすぐにググーンと体ごと湖に引っ張られるような強い手応えが。
「や、やったあー」
毎度の情けない僕の雄叫びに、さっきのブラウンをリリースしていたカズさんが
「でかいですよ。」
と真顔で言ってくれた。
 確かにそいつは大きかった。
65cmのブラウントラウト。
僕の七番ロッドを限界近くまでしならせたソイツは、またしても僕にとっての新記録であった。
「窪田さん、上達しましたね。
キャスティングはもちろん、リトリーブもよくなっている。
そして何よりも大物の扱いは格段の進歩ですよ。」
カズさんのうれしい言葉に照れながらそっと鱒をリリースした。
「こんな落ち着いた気分で、こんなに大きな鱒をリリースできるなんて去年までは思いもよらなかったです。」

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by kftkubo | 2013-07-04 06:47 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 32

カズさんからの手紙 32
(この物語はフィクションです。)

黒駒湖 鱒釣解禁日

 「きたっ!」
最近は聞き慣れたカズさんの大声がしたので横を見ると、彼の八番ロッドの先が湖に向かってオジギをしている。
カズさんは相変わらず冷静な所作でラインを手繰り寄せる。
 これも見慣れた光景である。
幾度かこの黒駒湖でカズさんと釣行し、毎回あの大声にびっくりしながら、それでいてカズさんの冷静さにもあらためて驚嘆する。
だけど僕の目にはグングンとあおられているロッドが、ウッフ、ウフ、ウッフっとまるでカズさんの喜びを表わしているように見える
「どれくらいですか。」
僕の質問にカズさんは落ち着いた静かな声で、
「たいしたことないですね。
40㎝オーバーのブラウンでしょう、たぶん。」
と答えた。

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by kftkubo | 2013-06-26 18:41 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 31

カズさんからの手紙 31
(この物語はフィクションです。)

2032年4月2日

 ビューン、ビューンとラインが風を切る音が聞こえてくる。
聞き慣れた音だ。
今まさにカズさんが僕の左十メートル程離れて8番のシンキングラインを遠投しようとしている。
2032年4月2日。
快晴、気温摂氏六度。
午前5時30分。
黒駒湖の鱒釣解禁の日である。
僕とカズさんのほかに10名の人間が、それぞれ各自のポイントでロッドを振っている。
そしてその中にはもちろん古葉さんと僕の友人佐藤さんもいる。
黒駒湖アングリング倶楽部の当初のメンバーが全員ここに揃って竿を出している。
 個人所有の湖なのだから特別禁漁期間を設ける必要もないのだけれど、将来だれもがネイティブな釣りが出来る湖として開放したいという古葉さんの希望で、まだほんの仲間内で勝手に釣りを楽しんでいた頃から禁漁期間を決めていたということである。
11月23日から4月1日までの約5ケ月間である。

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by kftkubo | 2013-06-13 18:38 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 30

(この物語はフィクションです。)

黒駒湖 レインジャー

いよいよ話は核心へ近づいたようだ。
古葉さんが話を引き継いだ。
「まず私たちが考えたことは、黒駒湖をすべての人に解放するためにどうすればよいかということです。
そしてその答えがやっと出たのです。」
そこで古葉さんが言葉を切った。
ストレートのバーボンで口を湿らせた。
僕は酸素不足で倒れるかと思うほど息を詰めて次の言葉を待った。
 「それは〝ガイドシステム″なんです。
つまり誰もがここで釣りはできますが、その場合必ずひとりのアングラーに対してひとりのガイドを付けるのです。
しかも釣りのガイドだけではなく、湖とその周辺の自然に対するレインジャーでもあるのです。
いや、正しくはレインジャーが釣りのガイドも務める、と言ったほうがいいでしょう。
そして窪田さん、あなたにそのレインジャーのひとりになってほしいのです。」

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by kftkubo | 2013-06-05 18:56 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 29

カズさんからの手紙 29
(この物語はフィクションです。)

カーティス・クリーク

自分を含め、釣師は釣れたいい話ばかりよくしているので、あやうく釣りは大自然の懐に抱かれ都合生活のストレスを忘れさせてくれる、なんて下手なコピーみたいな気持ちになってしまうところである。
つまりなんのことはない、さらにストレスをためてしまっているのである。
だからこそ黒駒湖が必要なのだ。
そうだ、どうなるのだろう黒駒湖の話は。
「そこで黒駒湖アングリングクラブの件なのですけどね、」
カズさんが静かな口調で切り出した。
「会員制という話は中止となったことは先程お話しました。
あまりにも特権的であまりにも閉鎖的ですからね。
古葉も同じ考えなのですが、結局私たちは釣りが好きですし、釣りが好きな人たちが好きなのです。
誰もが釣りを楽しめて、誰もが満足して帰れる。
数多くの人たちのカーティス・クリークになる。
これが私たちの希望なのです。
そしてこれが一番肝心なことなのですが、ここで釣りをした人たちは必ず何かを学んでほしい。
本物のアングラーとなって帰ってほしい。
湖自体をひとつのスクールとしたいのです。」

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by kftkubo | 2013-05-28 14:18 | カズさんからの手紙 | Comments(0)