フィッシャーマンのためのフィッシングカフェ


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カズさんからの手紙 18

カズさんからの手紙 18
(この物語はフィクションです。)

見果てぬ夢

かなりの時間がたった様な気がした。
カズさんのヒンヤリした手が僕の手を握っている。
「おめでとうございます。」
僕は放心状態で足元に横たわる、55㎝紫色の帯が輝くスーパーレインボウを見た。
「ちょっと遊ばせ過ぎでしたね。
こいつは全力を出し切ってしまったから、もう放しても無理でしょうね。
窪田さん責任とってやって下さいね。」
僕がまだ放心状態が続いていて、言っている意味がわからずポカッとした顔をしていると、
「今夜は泊っていって下さいよ。
こいつがメインディッシュになりますから。
うまいですよ。」
といいつつ僕の生れてはじめての50㎝オーバーのネイティブ トラウトは、早くもしめられ、お腹をさかれてしまっていた。
悲しそうな僕の表情を誤解したのかカズさんが言った。
「このサイズの鱒になるとほとんど敵はいないのです。
だからこうして時々私達の食卓にのる事も必要なのです。
つまり間引きとでも言うのかな。」

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by kftkubo | 2013-03-23 07:33 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 17

カズさんからの手紙 17
(この物語はフィクションです。)

ネイティブ レインボウ50㎝オーバー

「そらキターッ!」
反射的に大あわせをしたと思う。
そう確かに大あわせだったはずだ。
なのに、ロッドが立たない
それどころか手元にあまっていたラインがスルスルと手の中をすり抜け、リールのドラックがはげしく鳴って更にラインがもっていかれた。
「ロッドを左手に持ち替えて、右手でリールにドラックをかけて下さい。」
カズさんの声がとんだ。
これか。
よく海外の釣り雑誌で見るシーンだ。
それを今、僕がやっているのだ。
うれしくて頭の芯が痩れてきた。
紅葉の山並をバックにそいつがジャンプした。
「50㎝オーバー!レインボーですよ。窪田さん。」
ヒェー、僕にとっては未体験ゾーン。
手のヒラが熱い。
ロッドを持つ手が痩れてきた。
ライン、ロッド、リールと伝わったそいつのパワーが僕の体全体に強い生命力をぶつけてくるようだ。
再びジャンプ、そして流れを登って行く。
その度に僕は「うわっ、とっと。」なんておかしな声を発しつつ、へっぴり腰で防戦一方だった。
それでも疾走は止った。
僕は釣ってしまうのだろうか。
見果てぬ夢、ネイティブ レインボウ50㎝オーバー。

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by kftkubo | 2013-03-17 17:29 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 16

カズさんからの手紙 16
(この物語はフィクションです。)

「フィッシュ オン」

「ちょっと早いのですネ。
極端な話向うあわせでいいのですよ。」
気をとり直してもう一度キャストする。
そしてうまくメンディングもこなしたぞ。
流れにゆられてモジモジと流されて行くカメ虫をうまく演出出来ていると自負。
ほうらとってもおいしそうなカメ虫だよ。
それ出ろ、ガポッと行け、どうした。
そんな思いを声にならない一人言でつぶやきつつじっと水面を見つめる。
秋の午後の日射しはギラギラと目にまぶしい。
ちょっと視線をはずし紅葉の山並を眺めつつ数度まばたきをした。
そして軽く深呼吸。
っと、その時ガポッというライズ音と鋭いカズさんの声がとんだ。

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by kftkubo | 2013-03-12 07:43 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 15

カズさんからの手紙 15

ナチュラルドリフト

ライズがちょっぴり離れてしまった様だ。
カズさんの指示するポイントにフライを流そうとしているのだけれど、流れ込みの水量は結構多い様ですぐに僕の緑のタワシにドラッグがかかってしまうのだ。
さっきはもっと流れの手前でライズしていたのに、今の騒ぎで流れの向う側ばかりライズしている。
「窪田さん、メンディング、メンディング。」
カズさんがあたり前の様に言う。
それは分っているけど………。
所詮はインドアフライフィッシャーマン。
小技がきかない。
きちんと練習しときゃよかったな。
それでも数回のキャストのうち何度かはメンディングもうまくいき、ナチュラルドリフトでおいしそうに流れていってくれた。
そして数度のアタリ。
しかし、のらない。
本当に大きな音をたててアタックしてくるのだけれどのらない。

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by kftkubo | 2013-03-07 07:59 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 14

カズさんからの手紙 14
(この物語はフィクションです。)

ネイティブ ブラウン 44㎝

余裕あるなあ。
僕だったら40㎝オーバーのブラウンなんてかけたら目はチカチカ、息はゼェゼェだろうに。
そして数分後、彼の足元に横たわったのは44㎝。
目を見張るほど美しいブラウントラウトだった。
「こいつは完全にこの湖生まれの鱒ですね。
ほら見て下さい。
ネイティブのブラウンだからこのヒレが異様に大きいでしょう。」
そう言ってカズさんは油ビレの反対に付いている付け根の尻ビレを軽く引っ張ってみせた。
鱒を大切に湖に返すと僕の方を振り返り、
「さあてと、すみませんでしたね。
どうも私はこの湖に向かうとまず勝負したくなってしまって。
一匹釣らないと余裕が出てこないのですよ。
その日の最初の一匹って大切ですからね。」

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by kftkubo | 2013-03-04 07:20 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 13

カズさんからの手紙 13
(この物語はフィクションです。)

正体は「カメ虫」

「さわらない方がいいですよ。」
そいつをつまもうとしたとき、カズさんの声がとんだ。
「カメ虫ですよ。つかむとしばらく臭いがとれませんからね。こいつは。」
そうか。
この毛針はこいつのイミテーションだったのだ。
「でもどうしてこんなにカメ虫が落ちてくるのですか。」
「今が彼等の交尾期なのです。
窪田さんはいいときに来ましたよ。
今日みたいな秋のいい日に、いわゆるカメ虫のスーパーハッチがあるのですが、まさに今日はその日というわけなので…キターッ!」
 会話の途中の突然の大声に、僕はビックリして彼の方を見ると彼のロッドがググーンと根元から曲がっていた。
「けっこういい型ですね。
40cmは越えているかな。
ブラウンですね。
5番ロッドだからおもしろいですよ。」

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by kftkubo | 2013-02-23 22:02 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 12

カズさんからの手紙 12
(この物語はフィクションです。)

湖面のライズ

驚いたことに真っ昼間だっていうのに、湖面がやたらと賑やかである。
カズさんの前の水面でも盛んにライズしているらしく、その度に「ヤヤッ」とか「ウヒャッ」とかおかしな叫び声を発している。
何にそんなにライズしているのか、じっくり見てみることにした。
ライズは流れ込みの流芯を中心に半円を描く様に広がっているようだ。
ということは何かが川の上から落ちてきているのだろう。
ギリギリの水際まで近づいてみる。
カズさんのラインがビュンビュンと音を立てて空を切る。
キャスティングフォームは荒々しいけれど的確にポイントに向かってラインの先端が近づいていく。
視線をずらして上流を見てみる。
偏光グラスが無いのでよく見えないのだが、かなり大きな甲虫のようなものがモジモジと動きつつ相当数流れてきていて、鱒たちはそれにアタックしているらしいのだ。
ちょっと手の届きそうなところへ、そいつが手足をバタつかせ漂ってきたのでフライロッドで引き寄せてみた。

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by kftkubo | 2013-02-16 19:10 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 11

カズさんからの手紙 11
(この物語はフィクションです。)

ログハウスから湖まで

ログハウスから湖までは、ゆっくり歩いて5分くらいの距離だそうだ。
白樺の多い林の中は、若干の上り坂になっている。
10月といえばまだ枝にはしっかり色づいた葉が付いていて、林の中に入るとかなり薄暗く、また、上り坂の為ほとんど下を向いて歩いていた。
林と砂浜の境が坂の頂になっていて、そこに立った途端に十月の眩しい日ざしに輝く駒黒湖が素晴らしい紅葉をバックに、圧倒的な強さで目に飛び込んできた。
大切に守られてきた世界がここにはあるのだな。
こんな場所でこんな日に釣りができるなんて。
僕の心はそれだけで満たされてしまったようだ。
今度は渚まで下り坂になっている砂浜を一気に駆け降りる。
すでにカズさんはロッドにリールをセットし始めていた。
「右手に見えるのが大前川の流れ込みで一番のポイントになります。
そしてさらにその先50mくらいに、もう一本小貝川の流れ込みがあり、まあそちらが第二のポイントでしょうか。
他にもいいポイントはいくつかありますが、今日のところは時間もないし、とりあえず手前の流れ込みでやってみましょう。」
カズさんは毛針までセットしてくれたフライロッドを僕に手渡すと、猫背気味の後ろ姿を残しつつ静かに素早くポイントへと歩いていった。
カズさんから手渡されたロッドはS社の9f-7番ロッドであった。
さらにリールはH社のものであり、ラインはフローティングラインが巻かれてあった。
僕には少々素晴らしすぎる道具のようだ。
そして肝心の毛針はというと、緑色の小さなタワシとしか見えない代物が、チョコンとフックキーパーにくっついていた。
偏光サングラスをかけた表情は窺い知れないが、カズさんはすでにフォルスキャストを始めていて、視線は湖面に注がれている。
僕の存在など忘れているようだ。
彼の釣りをしばらく眺めて見ることにした。

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by kftkubo | 2013-01-31 19:25 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 10

カズさんからの手紙 10
(この物語はフィクションです。)

会員証は100万円

今の僕にそれが多いのか少ないのかはわからなかった。
お金の計算をするのは何だけど、例えば今後10年間、1年に10回ずつここへ通ったとすると百回。
会員証は100万円。
宿泊は無料、飲食費のみ。
決して無理のないところなのだろう。
年に10回位がカーティス・クリークたる所以かもしれないし。
そんなせせこましい計算をぶっとばしたのが壁に掛かっている剥製である。
あたかも水面からジャンプしたかのような姿の黒駒湖の王者。
「レインボートラウト75cm
釣入 波瀬 和之
2030年6月8日
尻尾岩先端にて」
鋼板プレートにはそう刻まれている。

「では、ちょっとやってみましょうか。」
コーヒーを飲み終えたカズさんが立ち上がった。
壁に掛かっているロッドを二本取ると、ネービーのワッチキャップをかぶりブルーのウィンドブレーカーを着た。
その背中にトラウトのイラストと『黒駒湖アングリング倶楽部』の文字が白く書かれてあった。
僕はちょっとよろけるように立ち上がると眼鐘の曇りをふきとりながらその後を追った。
バルコニーでは例の狼のような犬が小首をかしげて見送ってくれた。

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by kftkubo | 2013-01-28 17:46 | カズさんからの手紙 | Comments(0)

カズさんからの手紙 8

カズさんからの手紙 8
(この物語はフィクションです。)

黒駒湖にて 

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車から降りるとひんやりとした空気が僕を包んだ。
黒駒湖は既に初冬のにおいがした。
僕はこの季節が一番好きだ。
夏に伸び切ってしまったような空気が少しずつ緊張感を高め、ピーンと張りつめたギターの弦の様にこの季節には高音がよく似合う。
僕の心の弦もたちまち張りつめてくる。
それにしても今日は少し暖かめの格好をしてきて良かった。
ウールのシャツとダウンベストが今はとっても有り難い。
「とりあえずあちらでコーヒーでも飲みましょう。」
古葉さんの指す方向に大きなログハウスがあった。
ログハウスに近づくとバルコニーのあたりから何か大きな動物がこちらに向かってくる。
犬だ。
まるで狼のような大きな犬が、古葉さん目がけて走ってくる。
そしてヒゲ面の大男の古葉さんとその大犬が抱きあいじゃれあっている。
そのバックにはログハウスがあり、その右手方向には美しく紅葉した天然林が広がり、左手にはベージュの湖岸、青き黒駒湖が広がっている。
そしてすべてを見下ろす形で紫色の山並みがあるのだ。
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by kftkubo | 2013-01-20 18:38 | カズさんからの手紙 | Comments(0)